「持分なし医療法人」への移行には、税制や融資で優遇が受けられる認定制度を利用できます。
この制度の認定期限は、今のところ2023年9月30日。厚生労働省が推進する一方で、移行を躊躇されている医療法人も数多くあります。
●「持分あり」を継続した場合のリスク
持分あり医療法人では、出資者が出資割合に応じて法人資産を払戻すことができます。出資者が退職の際に払戻しを請求したり、出資者自身が亡くなった後、その相続人が払戻しを請求したりなどの可能性があります。
特に、大幅に純資産が増額している法人では、払戻額も莫大です。医療法人は配当が禁止されており、評価額が大きく膨れ上がっているケースもあります。
(例)
- 設立時 :出資金500万円 うちAが100万円を出資(全体の1/5)
- 十数年後:Aは退職に伴い、払戻しを請求 そのときの法人の純資産が3億円
この場合、医療法人には、3億円×1/5=6,000万円の支払い義務が生じます。
この状態は、経営を継続していく上で、大きなリスクとなります。これを回避し、地域の医療サービスの安定を図るために、持分なし医療法人への移行が進められています。
●認定制度による優遇措置とは
移行では、持分の放棄や払戻しにより、持分を消滅させます。このとき、税負担や、金銭的負担が発生します。これを軽減すべく設けられたのが認定制度です。2023年9月30日までに認定されれば、本来発生する相続税・贈与税が猶予(場合によっては免除)され、低利の融資を受けることができます。
認定制度は、予め厚生労働省に移行計画を申請し、認定を受ける制度です。この計画に基づいて、持分放棄や払戻し、定款変更のための手続きを行い、持分なし医療法人に移行します。移行後6年間は、運営状況を毎年報告することが義務付けられています。
移行後は「持分」の概念がなくなり、事業承継がスムーズになります。また、内部留保で相続税がかさむ心配からも解放され、安心して利益を計上できる利点もあります。
一方でデメリットとしては、6年の間、認定制度による要件を満たすことが求められることや、持分がないために、法人が解散しても財産が手元に戻らないことが挙げられます。
参考:
厚生労働省「持分の定めのない医療法人への移行計画の認定申請について(認定医療法人制度)」
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